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Toggleはじめに:親の会社と「実家」、相続の準備はできていますか?
ご両親が長年大切に育ててきた会社。しかし、「いざ自分が継ぐ(相続する)」となったとき、何から手をつければいいのか戸惑ってしまう方は少なくありません。
特に注意したいのが、会社の**「自社株」と、社長個人が所有している「実家などの不動産」**です。これらは現金と違って分けるのが難しく、何の対策もしていないと、残されたご家族に莫大な相続税がかかったり、身内同士のトラブルに発展したりする恐れがあります。
この記事では、初めて相続に直面する方に向けて、親の会社(自社株)と財産をスムーズに引き継ぐための基本を、分かりやすく解説していきます。

第1章:会社の株が高すぎる!?自社株を引き継ぐ基本の作戦
お父様(またはお母様)が一生懸命に会社を経営し、少しずつ利益が貯まってくると、気づかないうちに会社の「株の価値(株価)」が何億円にも跳ね上がっていることがあります。
もし、そのまま何の対策もせずに相続のタイミングを迎えてしまうと、後継者であるあなたに莫大な相続税がかかり、「税金を払うために会社を潰さなければならない…」といった事態になりかねません。
そうならないために、銀行などの専門家からよく提案される「2つの選択肢」を分かりやすく解説します。
1. 新しい会社を作って親の株を買い取る「持株会社(ホールディングス)作戦」
銀行からの提案で最も多いのが、この方法です。「ホールディングス」というと大企業の話のようですが、中小企業でもよく使われます。

【どんな仕組みなの?】
- 後継者であるあなたが、自分のお金(例えば500万円)を出して**「新しい会社」**を作ります。
- その「新しい会社」が、親から何億円もする株を買い取ります。
- 買い取るお金はないので、銀行からお金(例えば4.8億円)を借ります。
- 結果として、今の会社は「新しい会社の子会社」になります。
- 今の会社が稼いだ利益を「新しい会社」に渡し、そのお金で銀行へ借金を返していきます。
【親(今の社長)のメリット】 自分の株を買い取ってもらえるため、手元に多額の現金が入ります。このお金は老後の生活費にできるだけでなく、会社を継がない他のご兄弟へ「実家(不動産)」や「現金」を平等に分けるための資金としても大活躍します。
【後継者(あなた)のメリット】 株を「相続」で直接もらうわけではないので、**手元に多額の税金を払う現金がなくても、会社を引き継ぐことができます。**また、将来会社がさらに成長しても株価が上がりにくくなるため、次の世代(あなたのお子さん)への負担も減らせます。
【気をつけるべき「落とし穴」】
- 税金がかかる: 株を売った親には約20%の税金がかかります(ただし売った現金から払えるので心配はいりません)。
- 会社の体力が必要: これが最大の注意点です。今の会社に、**銀行の借金を何年もかけて返し続けるだけの「利益を出し続ける体力」**がなければ、この作戦は途中で破綻してしまいます。
2. 財産を社会のために活かす「公益法人への寄付」
こちらは少し特殊ですが、ご両親がすでに美術館や教育機関など「公益法人」に関わっている場合などに検討される方法です。
【仕組みとメリット】 通常、会社や不動産を誰かにタダで譲ると、なぜか譲った側(ご両親)に税金がかかってしまいます。しかし、相手が「公益法人(教育や福祉に貢献する法人)」であり、厳しい条件をクリアできれば、特例として税金を一切かけずに財産を寄付することができます。
【注意点】 一度寄付した財産は、もう家族の手には戻りません。あくまで「ご両親の財産を社会の役に立ててもらう」ためのものであり、単なる節税目的で無理に行うものではない点に注意しましょう。
第2章:税金がゼロになる魔法?「特例事業承継税制」の光と影
自社株を引き継ぐとき、一番のネックになるのが多額の「贈与税」や「相続税」です。 「会社を継ぐだけなのに、どうしてこんなに税金を払わなきゃいけないんだ…」と悩む後継者のために、国が用意したのが**「特例事業承継税制」**という制度です。

一見すると「税金がゼロになる夢のような制度」に見えます。しかし、実は会社をガチガチに縛り付ける厳しいルールも隠されています。メリットだけでなく、裏に潜むリスクをしっかりと理解しておきましょう。
1. 特例事業承継税制の仕組みとメリット
この制度の最大のポイントは、株を引き継いだときにかかる税金が**「100%全額猶予(ゆうよ)」**される点です。
「猶予」とは、「税金はかかっているけど、今は払わなくていいよ。待ってあげるよ」という意味です。そして、一定の条件を長期間(原則としてご両親が亡くなるなど、最終的な引き継ぎが終わるまで)守り続けると、その税金が「免除(本当に払わなくてよくなる)」されます。
【メリット】 手元に多額の現金がなくても、無税で親の株をすべて引き継げます。税金の心配をせずに、スムーズに社長交代ができるのが最大の魅力です。
2. 制度を利用するための厳しい「条件」と「期限」
この制度を使うには、あげる側(ご両親)ともらう側(あなた)の両方に、細かく厳しい条件が設定されています。
- 期限のルール(要注意!): この制度は期間限定の特例です。事前の計画書の提出期限は延長等の措置がとられていますが、「令和9年(2027年)12月末まで」に実際の株の引き継ぎ(贈与や相続)を終わらせなければならないというタイムリミットは変わっていません。今から準備を始めても、スケジュールはかなりタイトです。
- ご両親の条件(贈与の場合): 株を渡すタイミングで、必ず「代表取締役」を退任しなければなりません。
- あなたの条件(贈与の場合): 株をもらうタイミングで「代表取締役」になっている必要があります。さらに「役員になってから3年以上経っていること」などの条件もあるため、今から慌てて役員になってもすぐには使えません。
3. 実はあまり知られていない「恐ろしいデメリット」
この制度は、税金を待ってもらう代わりに**「会社を縛り続けるルール」**が存在します。ここを理解せずに飛びつくと、後で大変な苦労をすることになります。

- ① 終わりのない「書類提出地獄」 税金が完全に免除されるまでの間(何十年にもわたる可能性があります)、あなたは毎年、都道府県と税務署へ分厚い報告書類を提出し続けなければなりません。もし1回でも提出期限を忘れたら、その時点で制度は打ち切りとなってしまいます。
- ② M&A(会社の売却)ができなくなる 制度を利用している間は、原則として引き継いだ株を手放すことができません。将来、「自分には後継者がいないから、会社を別の企業に買ってもらおう(M&A)」と考えても、この制度を使っていると売却が制限されてしまいます。
- ③ 途中でやめると「利息」を上乗せして現金で一括払い 書類の出し忘れや、株を売ってしまったなどの理由で制度が打ち切りになると、どうなるでしょうか。 **これまで待ってもらっていた莫大な税金を、現金で一括払いしなければなりません。**さらに恐ろしいことに、待ってもらっていた期間に応じた「利息(利子税)」まで上乗せして請求されます。
4. 本当にこの制度を使うべきか?(実家売却という選択肢)
このように、特例事業承継税制は「とりあえず税金がゼロになるなら使おう」という軽い気持ちで手を出すと、将来の経営の自由度を奪い、長期間にわたって精神的な負担を強いることになります。
そのため、場合によってはこの制度を使わずに、**「あえて税金を払って堂々と株を引き継ぐ」**という選択をしたほうが、縛りなく自由に会社を経営していけるケースも多々あります。
「でも、税金を払うための現金なんてない…」という場合に有効なのが、社長個人が所有している「使っていない不動産」や、将来誰も住まなくなる「実家」の売却です。不動産を売却して現金化し、それを納税資金に充てることで、会社を縛るこの厄介な制度を使わずに事業承継を完了させる経営者も実は多いのです。
第3章:兄弟で揉めない「実家と会社」の分け方&賢い株価対策
お父様(現経営者)の財産には、会社の「自社株」だけでなく、ご家族でお住まいだった「実家」や「預貯金」などがあるはずです。 会社を継ぐお子さんと、継がないお子さんがいる場合、これらをどう分けるかが最大の難所になります。ここでは、家族の絆を守る「分け方のコツ」と、税金を減らす「裏ワザ」をお伝えします。

1. 財産は「きっちり3等分」するとトラブルの元?
子どもが3人いるからといって、実家や自社株を「とりあえず3分の1ずつ共有しよう」とするのは大変危険です。後になって「会社をどう経営するか」「実家を売るか貸すか」で意見が食い違い、身内同士の争い(争族)に発展してしまうからです。
大切なのは、それぞれの役割に合わせた**「役割に応じた相続」**です。
- 会社を継ぐ子ども: 自社株や、会社の工場・店舗の土地を引き継ぐ。
- 会社を継がない子ども: 実家(不動産)や、預貯金を引き継ぐ。
【不公平感をなくすための工夫】 とはいえ、「もらう財産の額が違う!」と不満が出るかもしれません。その場合は、**「相続税を払ったあとに、手元に残る現金がみんな同じになるようにする」**のが円満の秘訣です。
会社を継ぐ子どもは多額の相続税を払う必要があるため、その分の現金を多めに渡します。結果として、全員が自由に使えるお金が同じになれば、家族みんなが納得しやすくなります。
「でも、そんなに分ける現金がない…」という場合によく選ばれるのが、**誰も住まなくなった実家を売却して現金化し、みんなで分ける(換価分割)**という方法です。これなら1円単位で公平に分けることができ、不満が出ません。
2. 会社に貯まったお金を、税金を抑えて引き出す方法
長年コツコツと経営し、会社の中にたくさんの利益(現預金)が貯まっている場合。これを個人の口座に移そうとすると、最大で約50%もの高い税金がかかってしまいます。
そこでおすすめなのが、**「相続した株を、会社自身に買い取ってもらう」**という方法です。
会社を継がない子どもに、あえて自社株を少しだけ相続させます。そして、その株を会社のお金で買い取ってあげるのです。 通常はこれでも高い税金がかかるのですが、**「相続が発生してから3年10ヶ月以内」**に買い取ってもらう場合に限り、特例として約20%の低い税金で済みます。この特例を使えば、税金を安く抑えながら、会社のお金を個人の手元に移すことができます。
3. 【裏ワザ】わずか数万円の配当で、株価が劇的に下がる?
自社株の価値(株価)の計算方法は非常に複雑です。しかし、実は中小企業の場合、「これまで配当を出しておらず、たまたまその年の利益が赤字だった」といった条件が重なると、本来の価値以上に株価が異常に跳ね上がってしまうことがあります。

このような場合、あえて少しだけ(例えば数万円~数十万円)配当を出すだけで、特殊な計算ルールから外れ、株価が一気に下がることがあります。実際の事例では、たった40万円の配当を出しただけで、株価の評価額が1億5000万円も下がったケースもあるほどです。
このように、税理士などの専門家の知恵を借りれば、ほとんどお金をかけずに多額の相続税を減らせるケースがあることを覚えておいてください。
まとめ:相続対策の大きなカギは「実家(不動産)の活用」にあり
ここまで、親の会社(自社株)を引き継ぐための様々な方法を解説してきました。 しかし、どの作戦を選ぶにしても、必ず直面するのが**「税金を払うための現金」や「兄弟間で平等に分けるための現金」**が足りないという問題です。

第2章でお伝えしたように、税金をゼロにする特例(特例事業承継税制)は、会社を長期間縛り付ける恐ろしいデメリットがあります。 そこで、後継者が自由に会社を経営していくために、多くの経営者ご家族が選択しているのが、**「相続した実家や不動産を売却して、納税資金や兄弟へ分けるお金を作る」**という確実な方法です。

- 「親から実家を相続したけれど、誰も住む予定がない」
- 「自社株の相続税を払うために、使っていない土地を売りたい」
- 「兄弟で公平に財産を分けるために、実家を現金化したい」
もしこのようなお悩みがございましたら、まずは一度、不動産売却の専門家である弊社にご相談ください。 「今の状態ならいくらで売れるのか?」という無料査定から、税金対策を踏まえた最適な売却スケジュールまで、あなたの状況に合わせたベストな解決策をご提案いたします。

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